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銀山温泉

■僕と妻が結婚して二十年。十周年の時は横浜の懐石料理の店へ食事に行ったのだった。今回も懐石料理を食べに行こうかという話もあったものの、結局は温泉旅館へ泊まりに行くことに。行き先は前から行きたいと思っていた銀山温泉。そこで一番格の高い能登屋旅館は予約の取りにくい宿としても有名なのだが、今はコロナウイルスの流行のせいもあるのか、一週間前に予約があっさり取れた。
 当日朝。フリードで家を出発し、尾花沢の有名な蕎麦屋 きよで昼食にする。山形の蕎麦といえば、板そば。ここも板そばが人気の店ということで、時間によっては混むらしく、店の外に広い待合室がある。まず最初に漬物がどっさりと出てきた。きくらげなんて普段食べる機会がそんなにないから嬉しい。次に現れた板そばは名前の通り板のような木箱に歯触りの硬い蕎麦がどっさり盛られている。僕は温かい鳥つけ汁ももらい、途中から味を変えて楽しむ。すっかり満腹になってしまった。
 ここから銀山温泉はそんなに遠くない。土産物屋など覗きながら到着した温泉街は規模は小さいが、期待に違わぬ美しさ。街の真ん中を貫く銀山川の両側に大正ロマンな雰囲気の旅館が並んでいる。外壁に鏝絵が施された旅館もあり、野外美術館ともいえるような楽しさだ。温泉街の一番奥には滝があり、一通り歩き回ってから、今日の宿に向かう。僕らが泊まるのはこの温泉では主役級の能登屋旅館。塔屋のある美しい建築は国指定の重要文化財となっている。僕らの部屋は温泉街に面した本館で、ジュンは道行く人々を見下ろしながら優越感でいっぱいの様子。
 しかし、温泉街の情緒を味わうにはうちの双子はまだ若かったようで、その後は家から持ってきたNETFLIXを旅館のテレビに取り付けてアニメを見たり、タブレットでゲームをしたり。普段と変わらない過ごし方。それでもいいと僕は思っているけど、妻はそれじゃ仕方ないと考える方で不満げな様子。
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 妻と二人で温泉街を散歩し、湯豆腐を買い食い。地下にある洞窟風呂と四階の大浴場をハシゴした後、夕食は部屋で摂るのかと思ったら、別の広間へ案内される。他の客と同室ということはなく、僕らだけ。この辺も僕がこれまで泊まってきた安いホテルとは違う。料理は鯉の甘露煮なんかも並んでいて、鯉なんて食べられるかなと思ったが、口にしてみると、意外と美味しかったり。しかし、主役は尾花沢牛と米沢豚のしゃぶしゃぶ。豚がこんなにも美味しいことにも驚いたけど、やはり牛肉が天国的な味で、普段は赤身のタフな肉が好きと思っている僕もこれは別物として感動してしまった。食事中に旅館の女将が挨拶に訪れ、この旅館の由来などを聞く。やはり(旅館の名前通り)石川県由来の方なのだそうで。
 夜には通りに立つガス灯やそれぞれの旅館に明かりが灯り、温泉街は一番良い時刻を迎える。能登屋旅館の向かいは今は営業していない旅館なのだが、そこも夜には灯りを点けて、廃墟に見せない工夫。景観こそがこの温泉街の命だから。写真撮影に夢中な観光客の皆さん。僕もこの温泉街を大変気に入ったのだが、一軒くらい夜も遊べる居酒屋があったらいいなと思ったり。

■旅館で迎える朝。一人で散歩をし、公共の足湯に足を浸けてみる。旅館に戻り、家族と朝食を摂る。朝食は他の客と同室だけど、別にそれでいい。トロッとした湯豆腐が美味しい。食後に一階のカフェでコーヒーを飲んだ。
 豪華な旅館滞在もあっという間に終わり。銀山温泉はとてもいい場所だったけど、規模は小さいから、そう何度も来る場所じゃない。
 この辺りでは有名な最上川千本だんごでデザートをいただく。これはすごい。僕はこしあんの上に更にさくらあんを載せただんご。シュンが食べたのはこしあんの上に生クリームとイチゴを載せただんごで、これはもはやケーキだ。大変美味しくて、また来て別の味を食べたい。

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 帰路に通る天童は将棋の街。ジュンが最近将棋に凝っていることもあって、天童駅と隣接した将棋の博物館を見ていく。チェスを含めた世界各国の将棋に類したゲームが置いてある。大大将棋が凄いな。大変な数の駒を使う将棋で「老鼠」とか「悪狼」だとか、どう動くのかも見当がつかない。ジュンはコンピュータ相手に将棋を打っている。
 山形市内のフランス料理店でランチ。チーズ入りのカツレツを食べる。昨夜の旅館の食事でもお米が美味しいとジュンは言っていたが、ここでもお米に感動しているようで、どっちも山形産のつや姫を使っていると聞き、家で食べる米もつや姫にしてくれと。僕は米の味はよくわからないけど、確かに美味しいような気がしないでもない。山形に来るたびに寄るシベールの杜でラスクを買い、家に着いたのは夕方頃だった。
 時間が着実に流れて去っていく。きっと三十周年も共に祝えるだろうし、四十周年も祝いたい。五十周年はどうかな。六十周年もあれば、それは嬉しいけれど。
by asikapon | 2020-03-10 23:59 | 旅行記 | Comments(0)

Kawauso is new black.


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